細胞間の物質の透過は、上皮細胞の細胞間結合であるタイトジャンクションや腎臓糸球体上皮細胞ポドサイトの細胞間結合であるスリット膜に局在する細胞接着分子によって制御されていると考えられている。私はタイトジャンクションに局在するPDZ蛋白MAGI-1に結合する分子として細胞接着分子JAM4を見いだし、これらの分子が細胞間の物質の透過性制御に関わることを報告している。 今年度はJAM4の細胞表面の局在・発現を制御する分子機構を解明する一端として、サイトカインによる上皮細胞間結合再構築時のJAM4の局在変動を検討した6マウス乳腺上皮細胞NMuMGにTGFを作用させたときに、JAM4は細胞内に取り込まれ、一部は初期エンドソームに分布した。したがって、JAM4は上皮細胞において細胞間結合の構築を変化させる条件下で、エンドサイトーシスによる制御を受けることが示された。 JAM4の細胞質内領域をバイトにした酵母ツーハイブリッドスクリーニングにより、JAM4に結合する分子として新たにPDZ蛋白LNX1を同定した。LNX1はもともとNotchシグナルに関与して細胞運命決定に関わる分子Numbのリガンドとして同定された分子である。Numbはエンドサイトーシスに重要なEps15やα-adaptinと相互作用してNotchのエンドサイトーシスを促進することが知られている。そこでLNX1がJAM4のエンドサイトーシスに関わるかを解析した。腎臓からの免疫共沈および免疫蛍光染色により内在性のJAM4とLNX1が相互作用すること、NumbがLNX1を介してJAM4と間接的に相互作用し、三者が複合体になることを確認した。LNX1を過剰発現させるとJAM4のエンドサイトーシスが促進されること、この現象はLNX1を介してJAM4がNumbと相互作用していることによって引き起こされることも明らかにした。最後に、TGF作用下で観察されるNMuMG細胞でのJAM4のエンドサイトーシスにLNX1が関わることをノックダウンにより明らかにした。以上の結果からJAM4の局在・発現を制御する分子機構の一端が解明された。
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