研究概要 |
1.以前我々はIFNγによって誘導されるMHC class II.遺伝子のDNase I Hypersensitive Site(DHS)に結合する因子としてNuclear Factor 90(NF90)を単離した。また、酵母Two-hybridスクリーニングを行い相互作用因子を検索したところ、IFNシグナリングに対し負に作用するProtein Inhibitor of Activated Stat1(PIAS1)がbinding partnerのひとつであることがわかった。さらにNF90は選択的スプライシングにより5つの異なる因子でファミリーを構成しており、その中のNF90cをCXCR4を発現させた骨肉腫細胞やT細胞cell lineであるCEM12D7で高発現させるとIFN誘導遺伝子群(ISGs)が発現し、HIV-1の感染が抑制されることがわかってきた。そこで我々はNF90family全てを遺伝子導入効率の高いBOSC細胞やHela細胞で高発現させ、ISGsの発現を調べた。その結果、NF90cを含む全てのfamilyにおいてISGsの発現増加は確認できなかった。NF90は通常核内でNF45とヘテロダイマーを形成し存在していると考えられている。そこで、NF90ファミリーとNF45を共発現させてISGsの発現量を測定したが、それでも増加はみられなかった。このことよりNF90cによるISGsの発現増加は特殊な条件下でのみみられる現象であると考えられる。 2.我々はこれまでにNF90のbinding partnerとしてPIAS1以外にもいくつかの興味深い因子を単離してきている。そのひとつがTRBPである。TRBPの機能としては近年注目されているmicroRNAの産生経路においてDicerとRISCの橋渡し的な働きをすることが知られている。さらにmicroRNAの産生の初期段階で重要な働きをするDrosha複合体にNF90family/NF45が含まれることがわかってきた。そこでNF90 familyの主たる機能はmicroRNAの産生機構に関わるのではないかと考えその解析を行った。これまでの解析で、(1)NF90 familyはDrosha及びDicerと相互作用する。(2)NF90family/NF45複合体はmicroRNAの初期産物であるpri-microRNAの産生を促進する。ことがわかってきた。そこで現在は、microRNA産生経路におけるNF90family/NF45,Drosha, Dicer, TRBPの関係を明らかにするために解析を急いでいる。
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