研究概要 |
本年度の研究において、私は1)細胞の運動と増殖を制御する分子Necl-5が細胞密度に依存してダウンレギュレーションされる機構と2)そのダウンレギュレーションと細胞の運動と増殖の接触阻害機構との関係について重点的に解析を行った。その結果、Necl-5は細胞密度に依存したネクチン-3とのトランス結合をきっかけにクラスリン依存性のエンドサイトーシスによって細胞表面からダウンレギュレーションされることを、RNA干渉法によるネクチン-3のノックダウン、ネクチン-3との結合を阻害する抗Necl-5抗体、ネクチン-3細胞外領域のリコンビナントタンパクなどを用いた多角的解析により証明することに成功した。また、Necl-5のダウンレギュレーションは細胞の運動や増殖を減少させ、そのダウンレギュレーションを阻害すると細胞の運動や増殖の減少が抑制されることも明らかにした。これらの結果は、Necl-5とネクチン-3の結合が細胞の運動と増殖の接触阻害機構を制御する一つのシステムであることを示しており、これらの研究成果はThe Journal of Cell Biology(Fujito et al.,2005,171,165-173)に掲載された。一方、Necl-5はインテグリンαvβ3やPDGF受容体と相互作用することによって細胞の運動や増殖を制御しているが、その分子機構を明らかにするため、これら三者の物理的相互作用について解析を進めた。その結果、Necl-5とインテグリンαvβ3について、両者はお互いの細胞外領域を介して同一細胞膜上で結合し、Necl-5がインテグリンαvβ3の集積を制御することによって細胞運動を促進していることが明らかとなった。
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