これまで、WntがFrizzled(Fz)とその共役受容体のLRP5/6に結合した後に、そのシグナルがどのように細胞質内のDvlに伝達されるかは明らかにされていない。そこで、本研究ではWntとFz受容体の特異性やWntとその受容体のエンドサイトーシスの分子機構を明らかにすることを目的としている。今年度に得られた知見は以下のとおりである。 1)半定量PCR法により様々な培養細胞のFzの発現プロファイルを作製した。L細胞においてはFz5の発現が多いことが判明し、RNAiによってFz5の発現を抑制すると、Wnt-3a依存性のβ-カテニンの蓄積が抑制された。したがって、Fz5はWnt-3aを受容し、β-カテニンの蓄積を促進することが示唆された。 2)293細胞においてLRP6に対するWnt-3aの作用を解析した結果、LRP6はWnt-3a刺激1〜2時間後に細胞膜から細胞質に移行し、カベオリンやRab5、EEA1と局在が一致した。またFz5も同様に、Wnt-3a刺激1〜2時間後に細胞膜から細胞質に移行したが、Fz5はクラスリンと局在が一致した。LRP6とFz5を共発現させ、Wnt-3a刺激すると両者はカベオリンと局在が一致した。RNAiによってカベオリンの発現を抑制したり、Nystatinによってカベオラの形成を抑制するとWnt-3a依存性のLRP6のエンドサイトーシスとβ-カテニンの蓄積が抑制された。したがって、エンドサイトーシスによってLRP6が細胞膜から細胞質に移行することがβカテニンの安定化に必要であることが示唆された。 今後は、LRP6がカベオリンを介して細胞質移行した後、いかにしてβ-カテニンの蓄積を誘導するか、その分子機構を解析する予定である。
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