ミトコンドリアタンパク質の多くは、サイトゾルにおいて合成された後、ミトコンドリアの輸送装置により内部に取り込まれる。VDACやBaxなどのアポトーシス関連ミトコンドリアタンパク質も同様の装置によりミトコンドリア外膜上に輸送されると推定される。本研究では、アポトーシスにおけるミトコンドリア外膜タンパク質輸送装置の機能解析を目的とし、近年酵母で発見されたミトコンドリア外膜タンパク質輸送装置SAM複合体のヒトオルソログの同定と機能解析を試み、以下の結果を得た。 1.相同性検索の結果から、ヒトSAM複合体はCGI-51、metaxin、metaxin2と推定されていたが、これらのうち未同定であったCGI-51(酵母のSam50に相当、以後ヒトSam50と表記)をクローニングし、発現プラスミドや抗体を作製した。 2.blue-nativeゲル電気泳動や免疫沈降実験から、ヒトSam50は約200kDaの複合体に含まれており、その複合体にはmetaxin2も含まれることがわかった。しかし、metaxin1は約80kDaと400kDaの複合体中に検出された。電気泳動時のジギトニン抽出でmetaxin1がSAM複合体から解離してしまっている可能性も考えられるため、現在、架橋実験を組み合わせた検討も行っている。 3.ヒトSAM複合体の候補因子がミトコンドリア外膜タンパク質輸送装置であること証明するために、in vitroミトコンドリアタンパク質輸送実験と抗体阻害実験を組み合わせる実験を試みた。その結果、外膜タンパク質輸送をin vitroで再現することには成功したが、SAM複合体候補因子が外膜タンパク質輸送装置であることの証明には至らなかった。原因としては、作製した抗体が膜タンパク質の立体構造を認識できなかった可能性が考えられる。
|