ジアシルグリセロールをホスファチジン酸(PA)に変換する酵素であるジアシルグリセロールキナーゼ(DGK)γはRac1の負の制御因子である事を既に報告している。このメカニズムを解明するに当たり、Rac1に特異的なGTPase activating protein(GAP)であり、DGKの代謝産物であるPAにより活性化されることが知られているβ2-カイメリンに着目した。DGKγとβ2-カイメリンを共発現させた細胞において、ホルボールエステル、過酸化水素、EGFの細胞刺激に応じてこれらは複合体を形成することを見いだした。また、DGKγとβ2-カイメリンの細胞内局在も複合体形成能に応じて一致した。DGKγとβ2-カイメリンの結合部位をin vivoで検討したところ、DGKγの触媒部位のN末端側半分が、β2-カイメリンのSH2ドメインとC1ドメインの両方を含む部位が必要であった。また、DGKγを発現させると細胞刺激によるβ2-カイメリンの膜画分へのリクルートが促進された。刺激した細胞においてDGKγはβ2-カイメリンの野生型を発現させた場合はRac1-GTF量の減少を促すが、β2-カイメリンのGAP不活性型であるR313G変異体を発現させた時にはDGKγのこのような影響は見られなかった。これらのことからDGKγは細胞刺激に応じてβ2-カイメリンの活性を制御することによりRac1活性を制御する事が示された。
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