研究課題
本研究は、細胞運動制御や細胞の組織への浸潤性をもたらす基本的分子機序を明かにすること、また、癌細胞の浸潤転移性などの正常からの逸脱のメカニズムを明かにしていくことを目的としている。申請者は、これまでに低分子量G蛋白質Arf6が乳癌細胞の浸潤性制御に関与すること、Arf6に対してGAP (GTPase-activating Protein)活性を示すArfGAP蛋白質AMAP1が、乳癌細胞の浸潤活性に関与する分子装置の一部として機能している知見が得られている。本研究期間では、以下の研究成果を得た。1.個体発生におけるAMAP1の発現パターンの解析正常組織における細胞の浸潤は、特に発生過程において生じる。そこで、発生過程及び各種臓器を用い、RT-PCRによりAMAP1の発現を解析した結果、脳、骨格筋、脾臓、腎臓、精巣、肺、胸腺、そして発生過程におけるマウス胎児においてAMAP1のRNAを検出することが出来た。しかしながら、正常乳腺組織においては、AMAP1の発現がウェスタンブロッティングにおいて、ほとんど検出されなかった。このことは、浸潤性の高い乳癌細胞でAMAP1の発現が高いことから、AMAP1が乳癌細胞の浸潤に関わる重要な分子であることを裏付けている。2.AMAP1遺伝子破壊マウスの作製AMAP1の発生過程における細胞浸潤、及び癌細胞浸潤における機能を個体レベルで解析するために、条件的遺伝子破壊マウスを作製した。しかしながら、遺伝子のターゲッティング効率が悪いため、コンベンショナルノックアウトマウスを新たに作製している。3.乳腺発生におけるAMAP1の機能解析マウスの乳腺発生におけるAMAP1及びArf6の発現を調べた結果、remodelingが活発に行われている妊娠及び授乳期においてAMAP1及びArf6の発現が上昇していることが確認された。
すべて 2005
すべて 雑誌論文 (2件)
EMBO J. 24・5
ページ: 963-973
Methods Enzymol. 404
ページ: 216-231