研究課題
本研究は、細胞運動制御や細胞の組織への浸潤性をもたらす基本的分子機序を明かにすること、また、癌細胞の浸潤転移性などの正常からの逸脱のメカニズムを明かにしていくことを目的としている。申請者は、これまでに低分子量G蛋白質Arf6が乳癌細胞の浸潤活性において重要な役割を担うこと、また、Arf6のエフェクターとしてAMAP1を見いだし、乳癌細胞の浸潤に必須であること、AMAP1の蛋白質発現量が乳癌の浸潤性と正の相関があることを明らかにしてきた。さらに、乳癌の浸潤性と相関してAMAP1を中心とした複合体が形成されることを見出した。この複合体は、AMAP1/コータクチン/パキシリンから成る。正常組織での細胞浸潤は、胎児期の発生・分化過程や創傷治癒、免疫応答、血管新生等で観察される。これまで見出してきた乳癌細胞の浸潤活性に重要な役割を担う分子装置が、正常組織における細胞浸潤においても機能しているかを中心に解析を行った。本研究期間では、以下の研究成果を得た。1.個体発生、特に乳腺発生におけるAMAPIの発現及び機能解析正常組織における各種臓器やマウス胎児におけるAMAP1の発現、及び乳癌細胞の浸潤に重要であるAMAP1/コータクチン/パキシリン複合体をある種の臓器において確認した。特に、乳腺組織を構成している上皮細胞は、成長、妊娠に伴って細胞浸潤を活発に行っていることが知られており、Arf6やAMAPIは、細胞浸潤が活発に生じている妊娠期において発現が上昇していることを見出した。このことは、発生・分化過程における細胞浸潤においてもArf6やAMAP1が重要な役割を担っていることを裏付けている。また、血管新生は血管内皮細胞の浸潤によって生じることが知られている。血管新生においてもArf6やAMAP1が重要であることを見出した。2.AMAP1遺伝子破壊マウスの作製AMAP1コンディショナルノックアウトマウスを作製したが、遺伝子のターゲッティング効率が悪いため、コンベンショナルノックアウトマウスを新たに作製した。新たなAMAP1コンディショナルノックアウトマウスの作製も試みている。
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