研究概要 |
Nd1はkelch familyに属するアクチン結合蛋白である。細胞内においてアクチンフィラメントと結合し、細胞を種々のアクチン細胞骨格へのストレスを制御していると考えられている。培養細胞株にNd1-Lを過剰発現すると、細胞接着能の亢進、細胞運動能亢進などの変化が認められた。また抗癌剤であるdoxorubicinによるアポトーシスの抑制が認められた。さらにNd1-Lを過剰発現させたTransgenic miceでは、生後一年以上経過後にリンパ組織、肝臓、軟部組織に高率に腫瘍が発生し、発癌との関連が示唆された。癌細胞の転移は細胞接着、細胞浸潤あるいは形態変化など細胞骨格制御の変化によりおこると考えられている。そこでNd1-Lと癌転移との関連についての機能解析を行った。マウス腫瘍細胞株(B16,Colon26)を用いてNd1-Lを過剰発現するtransfectantおよびsiRNAにより発現をノックダウンした細胞株を作成し、Invasion assayによる浸潤能解析や経尾静脈肺転移モデルによる転移実験等を行った。B16メラノーマ細胞株ではNd1-L遺伝子導入により肺転移数は減少し、Nd1-Lノックダウンにより増加した。一方Colon26大腸癌細胞株においてもNd1-Lのtransfectantでは肺転移実験において転移数の減少が認められた。以上の結果から、Nd1-Lは癌細胞の臓器親和性や浸潤能を制御する遺伝子の1つであることが示唆された。今後Nd1-Lと種々の接着分子との相互関係やNd1-Lを介した細胞骨格シグナル制御機構について検討し、Nd1-Lの細胞癌化における役割、あるいは癌細胞転移における役割を解析していく予定である。
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