Nd1-L-Tgマウスは、作製した3系統すべてにおいて約1年後にリンパ腫、肝細胞がん、その他上皮系細胞などにがんが高率に発生した。BTB-Kelchファミリーの遺伝子が発がんにおいて重要な役割があるという報告もあることから、Nd1-Lと発がんおよびがん浸潤、転移に関して解析をすすめたところ以下の結果が得られた。 (1)Nd1-L-Tgマウスにおいて高率にがんが発生する。また、Nd1-L-Tgマウスの組織においてβ-cateninの量が増加していた。さらに多くの細胞では核内活性型β-cateninが認められた。 (2)がん細胞の転移、浸潤、悪性度におけるNd1-Lの関与について、マウス大腸がん細胞株Colon26とマウスメラノーマ細胞株B16を用いて検討を行った。Colon26をBALB/cマウスに静脈注射し、肺転移した結節と、親細胞におけるNd1-Lの発現についてウェスタンブロット法により調べたところ、肺転移結節ではNd1-Lタンパクの発現が約50%まで減少していた。 (3)Nd1-Lを強発現したColon26とB16のクローンを、マウスの尾静脈に接種し肺転移の結節の数について調べたところ、両者ともに転移結節数がコントロールの約20%に減少した。 (4)RNAi法によりNd1-Lの発現抑制したクローンを作製し、マウスの尾静脈に接種し、肺転移の結節の数について調べた。発現抑制したクローンはColon26とB16両者において、コントロールと比べ転移による結節数が約1.5倍増加していた。 以上の結果より、Nd1-Lの過剰発現により局所での細胞腫瘍化をきたすが、腫瘍の転移や浸潤は抑制され、逆にその発現の減少により転移浸潤を促進することから、Nd1-Lの発現量がアポトーシスや細胞接着、発がん、がん浸潤転移を制御していると考えられた。
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