細胞外分泌蛋白質WntとWntに活性化される細胞内シグナル伝達経路は種を越えて保存されており、細胞の増殖や分化等の種々の細胞機能を制御する。Wntはヒトやマウスでは19種類、受容体のFizzledは10種類存在する。Wntは細胞膜上の7回膜貫通型受容体Frizzledに結合してシグナルを細胞内に伝えるが、各WntとFrizzledの間の特異性については明らかでない。本年度の成果は以下の通りである。 (1)Wnt蛋白質発現系の確立 ヒトWnt-5bをPCR法によりヒト大脳cDNAライブラリーからクローニングし、哺乳動物でのヒトWnt-5b発現ベクターを作製した。Wnt4、Wnt5a、Wnt5bに対するポリクロナル抗体を作製、精製した。さらに、恒常的に可溶性のWnt-11を発現、分泌する哺乳動物細胞や昆虫細胞でWnt-11を発現するバキュロウイルス、マウスL細胞においてWnt-7a、Wnt-5bを培養上清に可溶性Wnt-7a蛋白質やWnt-5b蛋白質を分泌する細胞株を樹立した。 (2)Wnt4、Wnt5a、Wnt5b、Wnt-11に対するポリクロナル抗体を作製、精製した。 (3)Wnt蛋白質の部分精製 Wnt-11を分泌する昆虫細胞の培養上清からカラムクロマトグラフィーによりWnt-11を部分精製した。また、Wnt-7aを分泌するマウスL細胞培養上清からWnt-7aをカラムクロマトグラフィーにより部分精製した。 (4)Wnt蛋白質の生理活性測定系の確立 PC12細胞にWnt-7a発現プラスミドをトランスフェクションし、レポータージーンアッセイにより、Wnt-7aがTCF転写活性を促進することを確認した。 18年度は、Wnt-11や7a、5bを高度に精製して、これらWnt蛋白質の動物細胞での作用を解析する予定である。
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