研究概要 |
ファンコニ貧血(FA)は進行性の骨髄不全や好発ガン性を示す遺伝性疾患で、現在までに12の相補群(FA-A,B,C,D1,D2,E,F,G,I,J,L,M)が知られていて、そのうちIを除く11の原因遺伝子が同定されている。そのうちFA-A,B,C,E,F,G,L,Mは核内でFAコア複合体を形成しており、FA-D2のモノユビキチン化に必須の役割を果たす。それに対しFA-D1変異細胞では、FA-D2のモノユビキチン化が正常である。FA-D1原因遺伝子が家族性乳がん遺伝子BRCA2と同一であることが報告され、FA-D2のモノユビキチン化を介するFA経路とBRCA2との機能的連携が示唆されたが、その具体的なメカニズムは不明であった。 我々はニワトリB細胞DT40を用いて、FA-C,FA-D2およびBRCA2変異株、さらにFA-C/BRCA2 2重変異株を樹立し、遺伝学的な解析を行った。その結果、FA-C/BRCA2 2重変異株は電離放射線に対してBRCA2変異株と同等の感受性を示したが、DNA鎖間架橋剤に対しては、FA-CおよびBRCA2変異株より強い感受性を示すことを見いだした。DNA2重鎖切断修復においてはFA経路とBRCA2は同一経路で機能しているが、DNA鎖間クロスリンク修復に対してはそれぞれ独立した機能を持つことが示唆される。BRCA2は相同組換え修復過程における必須因子Rad51の機能を制御することが知られており、BRCA2変異細胞ではRad51の細胞内挙動やDNA損傷刺激後のクロマチン移行に異常が見られる。現在、FA-CやFA-D2変異細胞を用いて、GFP-Rad51の細胞内挙動をフォトブリーチングによる解析によって、また内在性Rad51のDNA損傷刺激後のクロマチン分画への移行を生化学的解析によって検討を行っている。
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