研究概要 |
がん転移におけるSrc型キナーゼの生存、増殖シグナルに対する影響を調べるため、RNAi法を用いて、Src型キナーゼの発現を阻害した肺がん細胞株を調整し、Soft agar colony assayによって検討したところ、Src型キナーゼのFyn, Yesの発現が足場非依存性増殖に重要であること、さらに、既存の生存シグナルや増殖シグナル(ERK及び、AKTシグナル)に変化の無いことを確認した。そこで、Fynにおける足場非存在下におけるシグナル伝達機構に着目して肺がん細胞株を足場非存在下で培養し、チロシンリン酸化結合領域であるFynのSH2ドメインに結合するチロシンリン酸化タンパク質を精製してCDCP1(CUB-domain containing protein 1)を同定した。 CDCP1はSrc型キナーゼがCDCP1のリン酸化タイロシンの734番目(Tyr734)に結合すること、足場存在下では接着依存的にリン酸化が制御されていること等が報告されているが、生物学的機能についてはほとんど解明されていない因子であった。そこで、足場非存在下でのCDCP1発現を検証した結果、足場存在下と異なり、発現とリン酸化の経時的持続が見られることを発見した。さらにそのリン酸化がSrc型キナーゼ阻害剤(PP2)及びTyr734をフェニルアラニンに置換したCDCR1のリン酸化に重要であることが示された。またRNAi法によるCDCP1発現阻害によって、足場非存在下における肺がん細胞株のアポトーシス亢進が認められたことから、CDCP1が、足場非依存性増殖においてアポトーシス抑制に機能する因子である可能性が示唆された。
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