多内分泌腺腫瘍症1型(MEN1)の原因遺伝子MEN1は癌抑制遺伝子であり、これまでにMEN1患者において、停止コドンを生じるナンセンス変異だけではなく、1アミノ酸置換のみを生じるミスセンス変異が多数報告されている。我々は、MEN1疾患関連ミスセンス変異をもつMEN1遺伝子産物meninが、ユビキチンプロテアソーム系で速やかに分解されることにより、機能喪失へと至ることをこれまでに見いだした。そこで、疾患関連ミスセンス変異によるタンパク質安定性の喪失のメカニズムを明らかにすることを目的として、疾患関連ミスセンス変異をもつmeninをもちいて、変異タンパク質安定性に関与する新規因子の同定を行った。FLAG-tagをつけたmeninの変異型タンパクを、HEK293T細胞に発現させ、免疫沈降法を用いて変異型タンパク質に特異的に結合するような因子の探索を試みた。変異型タンパク質に結合し、野生型タンパク質と結合に差のある因子がいくつか見いだされた。これらの変異型特異的に結合するタンパクを精製し、MALDITOF-MSにより、解析をしたところ、以前同定したheat shock proteinsとの特異的な結合が確認されたが、新規因子の同定には至らなかった。さらに自己免疫疾患に関連するミスセンス変異について、変異タンパク質の安定性を検討したところ、野生型のタンパク質と安定性の差を示さない、という結果が得られた。
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