研究概要 |
肝線維嚢胞性疾患の代表である先天性肝線維症(CHF)+カロリ病では、肝小葉内での肝星細胞(HSC)の活性化はなく、活性化HSC(筋線維芽細胞)が線維化の主体をなす慢性ウイルス性肝炎等とは線維化の機序が異なることが予測される.本年度は、CHF+カロリ病のモデル動物であるPCKラットを用い、CHF+カロリ病における肝線維化の機序を、特に胆管病変との関連から検討した. 【成績】 (1)病理組織学的に、PCKラットの拡張肝内胆管を構成する胆管細胞には、2種類の異なる形質を有するものがあった.すなわち、肝組織切片を用いた免疫染色で、通常の胆管細胞と同様の形質(CK19,E-cadherinが強陽性)を有するものに加えて、これら上皮系マーカーの発現が低下し、代わって間葉系マーカー(vimentin, N-cadherin, fibronectin)が陽性を示す胆管細胞がみられた.PCKラットの肝内において、この間葉系の形質を有する胆管細胞は,週齢とともに発現頻度が増加した. (2)PCKラットの培養肝内胆管上皮細胞をTGF-β1で刺激すると、vimentinとfibronectinの発現が著明に亢進した.しかし、TGF-β1単独刺激では、培養胆管細胞における上皮系マーカー(CK19、E-cadherin)の発現低下はみられなかった. 【考察と今後】 PCKラットでは、TGF-β1により胆管細胞の間葉系細胞への形質転換(epithelial to mesenchymal transition, EMT)が起こり、これが進行性の肝線維化に関与している可能性があると考えている.今後、PCKラットの培養胆管細胞を用い、特にTGF-β1と基底膜構成成分(laminin、collagenなど)との相互作用に着目して、胆管細胞のEMTについての検討を行う予定である.
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