研究概要 |
我々は当教室で樹立されたびまん性大細胞型Bリンパ腫細胞株HBL-2を用いて、N型糖鎖の合成阻害剤やO型糖鎖の合成阻害剤処理により、ガレクチン-1によるHBL-2の細胞死誘導が抑制された。(Oncol Rep 13:109-114,2005,Int J Oncol26:1063-1068,2005.)。さらに、ノイラミニダーゼ処理により細胞表面からシアル酸を解離するとガレクチン-1への細胞接着能が増強することが明らかとなった。また、スワインソニン処理によりN型糖鎖を合成不全にするとHBL-2のガレクチン-1への細胞接着が増強することが明らかとなった(Int J Oncol28:155・160,2006.)。 また、HBL-2においてガレクチン-3により細胞死が誘導され、スワインソニン処理によりN型糖鎖を合成不全にするとHBL-2のガレクチン-3による細胞死が抑制されることを見出している。したがって、ガレクチン-3は細胞表面のN型糖鎖に反応することにより細胞死誘導効果を発揮すると考えられる。さらに、ノイラミニダーゼ処理により細胞表面からシアル酸を除去すると、ガレクチン-3による細胞死が促進することも観察しており、細胞表面のシアル酸はガレクチン-3による細胞死に対して抑制的に作用すると考えられる。また、抗ガレクチン-3抗体を用いた免疫組織化学的検討ではガレクチン-3はマクロファージに陽性であり、リンパ腫細胞には陰性であったため、マクロファージから放出されたガレクチン-3がリンパ腫細胞へ作用することが推測された。ガレクチン-3による細胞死は形態学的には核の断片化がみられ、apoptosis様であったが、今後、このガレクチン-3による細胞死がapoptosisであるかどうかについてAnnexin V assayなどにより解析をすすめる予定である。
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