1).正常肺組織における部位別mRNA発現パターンの解析: 正常肺組織よりRNAを抽出し、上葉末梢部(肺気腫好発部位)と下葉末梢部(特発性間質性肺炎好発部位)および中枢側(いずれの疾患においても保たれている部位)における、遺伝子発現パターンをDNA arrayを用いて解析(スクリーニング)を行うために、これらの組織からのRNAの抽出方法について検討した。手術材料からのmRNAの抽出に関しては、技術的な問題を解決し、DNA microarray解析利用することのできる高品質なmRNAを安定的に抽出することが可能になった。現在、検討に必要なだけの症例が80%程度集積された。また同時に進めたデータベースによる検索から、MMP-7遺伝子の発現上昇が肺下葉において有意に上昇していることが示唆された。 2).上記遺伝子群の肺気腫および特発性間質性肺炎組織における関与の検討: 解析によって得られたMMP-7について、特発性間質性肺炎組織における遺伝子の発現を解析した。特発性間質性肺炎の肺組織では、免疫染色およびBAL液のELISAによる測定で有意にMMP-7の発現亢進が認められ、これらの酵素は活性化を受けていた。また、MMP-7の活性化因子としてCD151分子を見いだしたが、CD151も疾患群では有意に発現の上昇していた。これらのデータから特発性間質性肺炎では、MMP-7/CD151系により、MMP-7が活性化を受け、組織構築改変に関わっていることが示唆された。
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