研究概要 |
前年度において、in vitroにてβ-アミロイド(Aβ)蛋白凝集抑制作用および凝集Aβ蛋白脱重合作用を有することが確認された生薬である釣藤鈎、牡丹皮および桂皮、ならびにそれらを含有する漢方である抑肝散および八味地黄丸について、トランスジェニックマウスを用いたin vivo実験について検討した。 約9ヶ月齢のAPPトランスジェニックマウス(Tg2576)に、5ヶ月間生薬または漢方含有食餌を与え、給餌開始2ヵ月後に行動薬理実験として、passive avoidanceを行った(獲得試行として1週間、再生試行として3ヶ月間)。獲得試行では有意差は認められなかったが、再生試行では、どの生薬および漢方においても、薬物非投与マウスに比べて、有意に認知機能を改善させることが確認された。また、これらのマウスを実験後に解剖し、脳内および血中のAβ蛋白量についてELISA法で定量したところ、どの生薬および漢方においても、生体内Aβ蛋白量を減少させることが認められた。このことから、これらの生薬は、Aβ蛋白の凝集を阻害し、生体内Aβ蛋白を減少させることによって認知機能を改善させることが示唆された。 さらに、牡丹皮の有効成分である1,2,3,4,6-penta-O-galloyl-β-D-glucopyranose(PGG)についても同様にin vivo実験を行った。約17ヶ月齢のAPPトランスジェニックマウス(Tg2576)に、1ヶ月間PGGを8mg/kg/dayになるように経口投与し、脳内および血中のAβ蛋白量についてELISA法で定量したところ、薬物非投与マウスに比べて、生体内AB蛋白量を減少させることが認められた。PGG投与マウスの行動薬理に関しては、次年度検討する予定である。
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