多くの神経変性疾患において、細胞内の異常タンパク質の凝集・蓄積とそれに伴う神経細胞死が共通する病態として知られている。通常細胞内の異常タンパク質は、タンパク質分解機構の一つであるユビキチンプロテアソームシステム(UPS)によって分解され細胞内の恒常性が維持されているが、UPSが正常に働かない場合、細胞内の異常タンパク質は凝集体を形成して神経変性や神経細胞死を引き起こすことが明らかになりつつある。しかしながら、実際にプロテアソーム活性の変化と神経変性疾患の関与に関して、in vivoで解析を行った研究はこれまでに少ない。私たちは、ショウジョウバエをモデル生物として用いて、in vivoにおける神経変性とプロテアソーム活性の関与を示すことを試みた。これまでに行った神経変性抑制因子の過剰発現型スクリーニングにより、DANC系統を同定した。DANC系統による抑制型表現系の原因を特定するために、DANC系統がコードする遺伝子の探索を行ったところ、その候補に26Sプロテアソームの構成因子であるRpnが同定された。DANC系統ではRpnの過剰発現により、神経変性の抑制表現型が得られたと考えられる。Rpnがプロテアソーム構成因子であることからプロテアソーム活性に着目し、ショウジョウバエ個体におけるプロテアソーム活性を測定したところ、DANC系統及びRpn発現系統において恒常的にプロテアソーム活性が上昇しているという結果を得た。また、ショウジョウバエにおいてRpn遺伝子のノックダウンを行ったところ、プロテアソーム活性の減少・神経変性様表現系の表出が確認されたことから、in vivoにおける神経変性とプロテアソーム活性の変化が密接に関係していることが示唆された。
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