研究課題
誘導型プロスタグランジン合成酵素であるCOX-2は、大腸癌や胃癌などの腫瘍組織で発現誘導されている。また、COX-2の下流でプロスタグランジンE_2(PGE_2)合成に働く酵素、mPGES-1も腫瘍組織で発現誘導されており、COX-2とmPGES-1の共役作用により産生されるPGE_2が腫瘍発生に重要な役割を果たしていると考えられる。これまでに、胃粘膜上皮でCOX-2とmPGES-1を発現するトランスジェニックマウス(K19-C2mE)を作製して解析した結果、マクロファージ集簇とその活性化による炎症反応と、胃粘膜上皮の過形成性腫瘍の発生を認めた。今年度は、この腫瘍発生における炎症性サイトカイン、TNF-α、IL-1βの役割を解明するために、K19-C2mEマウスとTNF-αおよびIL-1受容体α鎖の各遺伝子ノックアウトマウスとの交配実験を行なった。また、腫瘍病変にはリンパ球浸潤も認めたため、Rag2遺伝子ノックアウトマウスとの交配実験も行なった。重要な事に、TNF-α欠損K19-C2mEマウスでは炎症反応と腫瘍病変の発生が抑制された。一方で、IL-1βシグナル遮断やT/Bリンパ球欠損による腫瘍形成への影響は認められなかった。したがって、COX-2とmPGES-1の下流で産生されるPGE_2はマクロファージ浸潤とその活性化を誘導し、引き続いて発生するTNF-α依存的な炎症反応が上皮細胞の過形成性腫瘍発生に重要であることが明らかとなった。この結果はCancer Research誌に論文発表した。今後、TNF-αによる上皮細胞分化への影響と、腫瘍発生へのマクロファージの重要性を明らかにする。
すべて 2005
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