TLR5遺伝子欠損マウスは樹立に成功し、C57/BL6へのバッククロスも完了した。TLR5欠損マウスを用いて、in vitroの実験によりリガンドとして同定されたフラジェリンに対する反応性を細胞レベル、個体レベルで解析することを試みた。まず、TLR5欠損マウスにフラジェリンを腹腔内に投与すると、野生型で認められたTNF-・やIL-6といった炎症性サイトカイン産生は完全に消失していた。これより、フラジェリンがTLR5のリガンドであることが証明された。次に細胞レベルでのフラジェリンに対する反応の解析を試みた。ところが、マウスでは、TLR5は、他のTLRファミリーメンバーが好発現している腹腔マクロファージや脾臓の樹状細胞、さらに骨髄細胞をマウスGM-CSF存在下で培養し単離した樹状細胞にも発現していなかった。最近、TLR5は腸管上皮に高発現していることが報告された。このため、野生型とTLR5欠損細胞から腸管上皮細胞を単離し、TLR5の発現及びフラジェリンに対する反応性を検討した。予想に反してTLR5の腸管上皮での発現は非常に低く、フラジェリンに対する反応性も非常に弱かった。腸管全体では、他の臓器に比べTLR5の発現が非常に高かったため、腸管の様々な細胞を分離し、TLR5を高発現する細胞群の同定に成功した。この細胞群を用いて、フラジェリンによるサイトカイン産生を調べた。また、野生型の細胞とTLR5欠損細胞をフラジェリンで刺激してRNAを単離し、DNAチップにより遺伝子発現を網羅的に検討した。さらに、フラジェリンを持つ有鞭毛細菌であるサルモネラによる感染実験を行い、サルモネラ感染におけるTLR5の役割を解析した。
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