シナプトタグミン様蛋白質(Slp1、Slp2-a)の機能を明らかにするために、Slp1、Slp2-aのノックアウトマウスの解析を行った。 Slp2-a欠損マウスにおいては胃表層粘液分泌細胞における分泌顆粒数が野生型と比べて有意に減少しており、さらに胃細胞培養系での粘液分泌を測定したところ、粘液分泌量もSlp2-a欠損マウス由来細胞において有意に減少していた。以上の結果より、マウス胃粘液の分泌過程にSlp2-aが関与することが明らかとなった(論文発表)。胃粘液の分泌を制御する細胞内膜輸送関連分子として同定された蛋白質はSlp2-aが初めてであり、胃粘液分泌の分子機構を解明する上で非常に有意義な結果である。 Slp1はその発現様式から、膵臓外分泌への関与が予想された。アミラーゼを初めとする消化酵素の合成および分泌経路におけるSlp1の機能を調べるために、絶食、絶食・再摂食、摂食各状態でのマウス膵臓外分泌細胞の形態を電子顕微鏡により観察したところ、Slp1欠損マウスでは絶食時には分泌顆粒数が野生型と比較して有意に増加していた。逆に絶食・再摂食時には、Slp1欠損マウスの分泌顆粒数は野生型と比較して有意に減少していた。摂食時には、Slp1欠損マウス、野生型マウス間で分泌顆粒数には有意な差は認められなかった。以上の結果より、外分泌細胞における消化酵素の合成・分泌経路にSlp1が関与していることが明らかとなった(論文投稿中)。今後、Slp1が具体的に合成・分泌過程のどの段階でどのような機能を持っているかを明らかにすることで、膵臓外分泌細胞での消化酵素合成・分泌顆粒生成・顆粒の細胞内輸送・開口放出の機構が分子レベルで明らかとなることが期待される。 また細胞傷害性T細胞におけるSlp1およびSlp2-aの機能を調べるために共同研究先にノックアウトマウスを送付済みであり、現在解析が進行中である。
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