石灰小体はエキノコックスの発育に必須であるがその機能は不明であり本研究では生化学・分子生物学的に機能を解明することを目的とした。 本年度は前年度明らかにした石灰小体に特徴的に大量に存在するたんぱく質についてアミノ酸配列の解析結果をもとにデータベースなどを用いて遺伝子のクローニングを試みた。明らかにしたタンパク質のうち特に発現量の多い16kDa、10kDa、8kDaのタンパク質はいずれも相同遺伝子が単包虫のみで報告されていた。報告の配列をもとにPCRによって部分配列のcDNAを単離した。今後これらのタンパク質の大量発現などにより機能の解析・抗体の作製などが行われると期待できる。 次に本年度はNativeなタンパク質の機能を解析することを目的とし、これまでトリクロロ酢酸やアミド硫酸などにより変性条件でしか抽出できなかった石灰小体タンパク質について穏やかな抽出条件を検討した。その結果Tween20やサルコシルによってもタンパク質が抽出され抽出効率もTCAと同程度であった。今後、この抽出されたタンパク質を用いて生理的な機能の解明を行う。 さらに、石灰小体は宿主の免疫系に影響を与える可能性が報告されていることから、本年度はまず、石灰小体抽出タンパク質の抗原性について検討した。感染マウスから血清を時系列で採取し前述の方法で抽出したタンパク質を用いてウェスタンブロッティングにより解析した。その結果、石灰小体のみに存在する50kDaのタンパク質が感染1ヵ月後からバンドとして検出された。これは、石灰小体に存在するタンパク質が抗原性を持っている可能性を示唆するものであり、石灰小体の生理的な機能とも関連して非常に興味深い。
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