研究課題
原虫感染症の中でも赤血球内寄生性のマラリアによる被害は特に甚大であり、全世界で年間感染者は数億人、死者に至っては100万人を超える。科学技術が発達した現代においてもマラリアの制圧が困難なのは、マラリア原虫が真核生物であり、宿主免疫応答からの巧みな回避機構を有することが挙げられる。しかしながら、その機構は未だ不明な点が多く、その解明はマラリア制圧に向け大きな突破口を開くものと考えられる。マラリア原虫感染に対する宿主応答として酸化ストレス反応が挙げられる。マラリア原虫は宿主免疫応答に起因する活性酸素種の産生により、さらには赤血球内に寄生するため、常に強い酸化ストレスに暴露されている。この酸化ストレスに対するマラリア原虫の応答機構は、本原虫の感染成立にとって根幹に関わるメカニズムであると考えられる。生体における酸化ストレス防御物質としてビタミンEが大きな役割を果たしており、ビタミンE欠乏が熱帯熱マラリアに抵抗性を示すことが古くから知られている。本研究ではヒト熱帯熱マラリア患者におけるビタミンE欠乏による感染抵抗性機序を解明するため、α-TTP-KOマウスとマウスマラリア原虫をモデルとして用いて解析を行った。ビタミンE欠乏による酸化ストレス上昇によって、赤血球ヘモグロビンの酸化が亢進することにより、赤血球内酸化ストレスレベルが上昇することが明らかになった。その結果、酸化ストレスによりマラリア原虫の赤血球内増殖が抑制され、宿主に対して感染抵抗性が賦与されることを明らかにした。以上の結果より、酸化ストレスのコントロールによりマラリアの病態をコントロールすることが可能になる得ることが示唆された。
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