本年度実施計画に従い、多種類の熱帯熱マラリア原虫遺伝子からの組換えタンパク質合成、ならびにマラリア流行地患者血清による組換え抗原タンパク質アレイスクリーニングのための条件検討を行った。 1 熱帯熱マラリア原虫3D7株ゲノムデータベースにおいてメロゾイト期原虫に特異的な転写が確認された遺伝子について、新たに100種類をPCR増幅によりプラスミド中にクローニングした。さらに、メロゾイト期の次の発育段階であるトロフォゾイト期についても、130種類の分子からクローンを得た。この計230種類から、コムギ胚芽無細胞タンパク質合成系により160種の組換え抗原タンパク質を合成した。コード領域のAT比が約70%に及ぶ熱帯熱マラリア原虫遺伝子の塩基組成を改変することなく、約7割のクローンから組換えタンパク質を得たことは、大腸菌など生細胞系の成績を大きく上回り、コムギ胚芽無細胞系の有用性が確認された。これより申請時に得ていた50種と併せてプロテインアレイ作製の基盤が形成された。 2 感度・特異性が高くかつ少量の組換え抗原タンパク質ならびにマラリア流行地患者血清試料で実施可能なスクリーニングを可能とすべく、プロテインアレイ作製を試みた。96ウェルプレートによる通常反応スケールのELISA系により、精製・アレイ作成用タグを特段付加しない場合とヒスチジンタグを付加したコンストラクト(ニッケルプレート)の異同を検討した結果、ヒスチジンタグによる感度・特異性の有意な上昇はなかった。実施計画に従って新たに微小空間内のエネルギー転移発光による相互作用アッセイ法を利用したスクリーニング系を検討すべく、ビオチンタグコンストラクトによるプロテインアレイの調製を進めている。
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