チカイエカやネッタイイエカを含むアカイエカ種群蚊はフィラリアやウエストナイル熱を媒介する重要な衛生昆虫で、日本に広く分布する。本研究では、ウエストナイル熱が日本に上陸した場合を想定し、殺虫剤抵抗性個体の簡便な診断法を確立することを目的とした。本年度は、蚊取り剤の主成分であり、ビル管理等チカイエカの防除に広く用いられるピレスロイド剤への抵抗性対策に主眼を置いた。本薬剤への抵抗性要因としては、作用点であるナトリウムチャネルの変異(kdr)とシトクロムP450酸化酵素系による解毒活性の増大が知られている。昨年度までの研究では、抵抗性アカイエカ集団のナトリウムチャネルではLeu999がSerへ、抵抗性チカイエカではLeu999がPheに、さらに、抵抗性ネッタイイエカではLeu999Pheに加えVal1001Glyへと変異していることを明らかにしている。本年度は、アカイエカ、チカイエカおよびネッタイイエカといったアカイエカ種群蚊の種判別とともに、ナトリウムチャネルやアセチルコリンエステラーゼ上に見いだされた抵抗性遺伝子の有無を同時に判定することを目的とし、ジェネティックアナライザを用いたSNaPshot法による解析法の確立を検討した。その結果、解析に必要なプライマーのデザインおよび実用的な解析条件の決定に成功した。今後は解析対象を殺虫剤の作用点に限らず、解毒酵素の発現制御因子に広げることを目的とする。
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