研究概要 |
赤痢アメーバにおいて生育に必須なコレステロールの取込みに関与する小胞輸送経路を明らかにするために、まず、エンドソームに局在するRab GTPaseがゲノムに幾つ存在するかを検索した。その結果、赤痢アメーバゲノムデータベースにはRab遺伝子だと考えられるsmall GTPaseが91種存在し、その数は多細胞生物のヒト(60種)やシロイヌナズナ(57種)の1.5倍に相当するものであった。そのうち、初期エンドソームに局在すると予想されるRab5は1種、後期エンドソーム/リソソーム系に存在すると予想されるRab7のアイソタイプが9種(Rab7A-Rab7I)、リサイクリングエンドソームに局在すると予想されるRab11のアイソタイプが4種(Rab11A-Rab11D)存在した。定量PCR法によって実験室株HM1:IMSS cl6での発現を検討したところ、いずれのRabも発現が確認された。よって、赤痢アメーバは他種生物に比べ、エンドソーム系の輸送経路が複雑化していると考えられた。中でも哺乳類細胞ではRab11は、リサイクリングエンドソームでコレステロールの細胞外への排出に関与すること報告されている。そこで、赤痢アメーバのRab11アイソタイプがリサイクリングエンドソームに局在するかどうかを検討した。まず、C末にHAタグを付加したRab11アイソタイプを赤痢アメーバ内で大量発現する形質転換株を作製し、その細胞ライセートを用いて細胞分画を行った。これまでの解析で、赤痢アメーバのRab7AならびにRab5はp13ならびにp100画分に回収されることが分かっている。一方で、Rab11A,11B,11Cのアイソタイプは何れもp13の重い膜画分に回収され、Rab7AならびにRab5とは異なる局在を示した。抗HAを用いた間接蛍光抗体染色では、細胞内に多数散在する凝集した膜状に観察された。リソソームマーカーのLysoTracker Red,あるいはFITC-デキストランを60分パルスしたエンドソームとは共局在しなかった。しかしながらFITC-デキストランをさらに60分チェイスすると、一部分のエンドソームとRab11ポジティブな膜との部分的な共局在が観察され、Rab11ポジティブな膜とリサイクリングエンドソームとのkiss-and-run融合が観察されていると推測した。
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