ガラクトサミン(D-GalN)とリポ多糖(LPS)を用いたエンドトキシンモデルは、劇症肝炎モデルとしても、実験的に確立されており、エンドトキシンショック(E-S)のメカニズムを検討するのに、頻用されている。NC/ngaマウス(NC)は、アトピー性皮膚炎の自然発症モデルとして知られており、主に皮膚科領域でアトピーのメカニズムの検索に使われている。今回、D-GalNとLPSをNCに投与したところ、全てのマウスが生存し、E-Sに耐性が見られた。そこで、このメカニズムについて、調べた。D-GalNとLPS投与で認められる肝臓の傷害が、controlのBalb/cマウス(Balb)に比べ、有意に少なく、肝細胞のアポトーシスも少なかった。また、Caspase3、8の活性化も明らかに、低かった。D-GalNとLPS投与による実験モデルでは、TNF-α (TNF)とIFN-γ (IFN)が重要な役割を果たすことが知られている。そこで、D-GalNとLPSを投与し、TNFとIFNを調べたところ、TNFの産生は両者に差はなかったが、IFNの産生はNCで低いことがわかった。D-GalNとLPSによるE-SはD-GalNとTNFを使っても同様の反応が見られることが知られている。そこで、D-GalNとTNFをNCに投与したところ、D-GalNとLPS投与と同様に、肝臓の傷害が有意に少なかった。このことは、何らかの理由で、NCがTNFによる細胞傷害を受けにくいことが考えられる。TNFとほぼ同様の肝傷害のモデルとして、抗Fas抗体(Jo2)の投与がある。NCにJo2の投与をしたところ、Balb同様の致死反応、肝傷害がみられた。このことは、Fasに対する反応がNCで正常に働くことを示している。FasとTNFへの反応では、一部を除いて、ほとんどが共通のシグナルを使うので、両者で異なる部分が何らかの理由でD-GalNとTNFによる反応をNCが受けにくくなっていると考えられる。今後、このメカニズムについて検討を進める予定である。これと平行し、新たなE-Sモデルを検討したところ、LPSとガラクトシルセラミドの投与により、肺を中心に傷害が起きるより臨床に近い実験モデルを見いだした。
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