マイコプラズマ肺炎はMycoplasma pneumoniaeによって引き起こされる過度の免疫反応が主な病原因子であると考えられているが、そのような免疫反応を誘導する因子はまだ見つかっていない。昨年度までの研究により、我々はジアシルリポプロテインであるsubunit b of F_0F_1-type ATPase(F_0F_1-ATPase)がToll-like receptor (TLR)1、2、6依存的に、トリアシルリポプロテインであるNF-κB activating lipoprotein (N-ALP)1及びN-ALP2がTLR1、2依存的に免疫反応を誘導することを見出した。 そこで今年度はF_0F_1-ATPase、N-ALP1、N-ALP2の合成ペプチドをマウスに経鼻投与することにより、生体内での反応を検討した。F_0F_1-ATPaseはマウスの肺において好中球の浸潤やサイトカイン、ケモカインの誘導を強く誘導したが、N-ALP1、N-ALP2はわずかに誘導するにとどまった。このことから生体内においてジアシルリポプロテインであるF_0F_1-ATPaseが炎症誘導に重要な役割を果たしていることが明らかとなった。 また、尿道炎や流産などを引き起こすUreaplasma parvum、尿道炎を起こすM.genitaliumについても同様に炎症誘導因子を同定した。U.parvumの炎症誘導因子はphase variationを示すリポプロテインであるMB antigen及び、UU012、UU016であった。これらのリポプロテインはTLR1、2、6依存的に炎症を誘導し、ジアシルリポプロテインであると考えられた。M.genitaliumの炎症誘導因子はリポプロテインのMG149であった。MG149はTLR1、2依存的に炎症を誘導し、トリアシルリポプロテインであると考えられた。
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