本研究の目的はニパウイルスめreverse genetics系を作製し、これをウイルス学的基礎研究およびワクチン開発などの応用研究に有用なツールとして確立することである。平成17年度は、ニパウイルス感染細胞から抽出したRNAを用い、RT-PCR法により6つのウイルス構造遺伝子とリーダーおよびトレーラー領域をそれぞれ増幅したのちプラスミドに組み込んだ。この際、のちに各遺伝子の組換えを容易に行なえるようにするため、各遺伝子間に人為的に制限酵素認識配列を導入した。これらを用いて最終的にウイルスゲノム全長(約19kb)を組み込んだプラスミドを作製した。また、ウイルスレスキューに必要なN、P、L蛋白を発現するためのプラスミドを作製した。これらのプラスミドを用いて、フランス国立医学研究所(INSERM)のP4施設内でウイルスレスキュー実験を行なった。その結果、遺伝子から感染性ニパウイルスを作出することに世界で初めて成功した。これにより今後組換えニパウイルスの作製が可能になり、ウイルス学的基礎研究、ワクチン開発などへの応用が期待される。さらに、ニパウイルスの6つの構造蛋白について大腸菌発現系を作製した。各蛋白にはGSTタグを付加し、このタグを利用して大腸菌のlysateから目的の蛋白を回収精製した。精製した蛋白をウサギに免疫してポリクローナル抗体を作製した。これら抗体は、各蛋白の細胞内動態解析の基礎研究、また感染動物からの抗原の検出やサンドイッチ法での抗体診断等にも役立てられる。
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