研究概要 |
成人T細胞白血病(ATL)はヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)の感染が原因となる極めて悪性の白血病である。HTLV-1と非常によく似たウイルスとしてHTLV-2が存在するが、この2つのウイルスの大きな違いは、HTLV-1がATLの原因となるのに対し、HTLV-2と白血病あるいはリンパ腫との関連は示されていないというところにある。 我々はHTLV-2のトランスフォーミング蛋白であるTax2はT細胞活性化の主要な因子であるNFATを恒常的に活性化しIL-2分泌を促進するが、Tax1にはその活性はないこと、HTLV-2感染細胞はこのIL-2のオートクラインにより増殖することを見出した。本研究では、Tax2によるNFAT活性化およびT細胞不死化のメカニズムを分子レベルで明らかにすることを目的としている。 1,Tax2におけるNEAT活性化部位の同定 Tax2はNFATを強力に活性化するが、Tax1にはその活性はない。この性質を利用し、N末端側がTax2、C末端側がTax1となるようなキメラ蛋白を6種類作製し、NFAT活性化能をレポーターアッセイにより検討した。この結果Tax2が191番目のアミノ酸までのキメラはNFAT活性化能を保持しているが、Tax2が154番目のアミノ酸までのキメラではその活性が顕著に減少した。このことからTax2の154から191番目のアミノ酸の領域にNF酊活性化に重要な領域が存在することが明らかとなった。 2,NFAT活性化に関与するTax2会合分子の同定 Tax2との会合分子をGST-Tax2を用いたpull downおよびLC-MS/MSを用いた質量分析法により同定する予定である。この際対照として、Tax1およびNFAT活性化能のないTax2のGST融合蛋白を用いることでNFAT活性化に繋がる分子の同定が可能になると考えている。
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