C型慢性肝炎に対する有効な治療法としてインターフェロン(IFN)とリバビリンの併用療法が現在、主流であるが、その治癒率は50%程度である。OR6アッセイシステム(ルシフェラーゼ活性の測定によりHCV RNAの複製レベルを定量的にかつ簡便に測定できるシステム)により、ミゾリビンが抗HCV活性を有することが示されたが、IFNに代わりうるところまでには至っていない。そこで、特異的治療薬の大規模スクリーニングを行うための新規システムの開発を目的として、可視化遺伝子(EGFP)を全長HCV RNA複製系に導入し、生細胞のままHCV RNAの複製レベルの観察を可能にする系の開発を試みた。このシステムに必要なEGFP遺伝子を含む全長HCV RNA複製細胞の樹立の準備段階として、以下の項目について検討した。1)EGFP遺伝子を全長HCV RNAのどの部分に挿入するか、2)HCV RNAの複製効率を上昇させる適応変異のどれをHCV RNAに導入するか、3)レシピエント細胞として、どの治癒細胞(HCV RNA複製細胞からHCV RNAをIFN-αで排除した細胞)を用いるか。1)に関しては、EGFP遺伝子をネオマイシン耐性遺伝子の前、コア遺伝子の前、NS5A遺伝子の後ろなどに挿入したものを作成した。また、それぞれの場所にEGFP遺伝子を1コピー有するものや組み合わせでEGFP遺伝子を2あるいは3コピー有するものも作成した。2)に関しては、NS3領域の適応変異であるE1202G(当研究室で見出された)あるいはK1609E(すでに報告されたものであるが、当研究室の全長HCV RNA複製細胞にも見出されている)のアミノ酸置換を導入したEGFP遺伝子を含む全長HCV-O RNAを作成した。また、両アミノ酸置換を有する場合に複製効率がさらに高まることが見出されたことから、両アミノ酸置換を有するものも同様に作成した。また、全長HCV RNA複製細胞の長期培養により複製効率が上昇している可能性を示す知見が得られたことから、それらのアミノ酸置換も今後、導入予定である。3)に関しては、O細胞(全長HCV RNA複製細胞)、あるいはOR6細胞(ルシフェラーゼ遺伝子を含む全長HCV RNA複製細胞)から作成したOcあるいはOR6c治癒細胞を用いた。また、HCV蛋白質が細胞内のIFNシステムに影響を与えている可能性を示す知見が得られたことから、IFN耐性を示す全長HCV RNA複製細胞から作成した治癒細胞も今後、使用する予定である。これらのHCV RNAをエレクトロポレーション法により、それぞれ治癒細胞に導入したところ、蛍光が観察される様々なG418耐性のクローン細胞が樹立できた。また、それらの細胞内でのHCV蛋白質やEGFP蛋白質の発現が確認された。
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