研究概要 |
多くの研究成果から、HIVの転写活性化は宿主細胞の転写活性化因子NF-κBとウイルスの持つトランス活生化因子Tatによって段階的に制御されていることが明らかとなった。 しかしながら、HIVの転写活性化機構が転写因子レベル、あるいはクロマチンレベルで明らかとなった一方で、HIV転写の負のメカニズムに関しては不明な点が多い。HIV発現の抑制機構が転写レベルで明らかとなれば、潜伏感染維持機構の解明へとつながることが期待できる。 本研究課題では、HIV LTRのTATA box近傍に転写因子AP-4の結合サイトが存在し、AP-4がHIV発現の抑制因子として機能していることを見いだした。 種々のHIV LTRの配列を調べた結果、AP-4の結合配列がよく保存されていることがわかった。そこで、HIVの遺伝子発現とウイルス複製に対するAP-4の影響を調べた結果、AP-4はHIVの転写と複製を強く抑制した。次に、AP-4による詳細な抑制機構を調べたところ、AP-4がTBPのTATA boxへの結合を阻害しているのと同時に、AP-4はHDACと結合しHDACをLTRにリクルートしていることが明らかとなった。この現象は、HIV慢性潜伏感染細胞をもちいたChIP assayにおいても確認でき、未刺激の状態ではAP-4がLTRに結合し、TATA boxをマスキングすると同時にHDACをLTRにリクルートしており、TNF-αの刺激が入るとAP-4がLTRから遊離し代わりにTBPとpol IIがLTRにリクルートされていた。 以上の結果から、感染細胞内でのAP-4の動態がHIVの潜伏感染維持に重要な役割を担っている可能性が推察された。なお、本研究成果はJ. Biol Chem. (Imai k and T, okamoto, vol.281, p.12495-12506, 2006)に発表した。
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