サイトカインは免疫系の制御を司るタンパク質として、感染防御あるいは自己免疫疾患やアレルギーなどの病態形成において重要な役割を果たしている。「WSX-1」は、インターロイキン-12受容体(IL-12R)に相同性を有するタンパク質として1998年に同定されたI型サイトカイン受容体であり、その後の解析からIL-27Rとして機能することが示された。我々は、IL-27/IL-27R(WSX-1)がTh1分化誘導もしくは炎症応答の抑制に関わることを明らかにしており、本研究課題では、アレルギー性疾患の病態形成における役割について解析を進めている。平成17年度は、アレルギー性疾患の典型である気管支喘息に着目し、WSX-1欠損マウスを用いて喘息モデル試験を行った。その結果、WSX-1欠損マウスでは、野生型マウスと比較して、気道過敏性の更なる上昇、肺粘膜の過形成、好酸球の肺浸潤を伴う炎症応答の亢進および血中IgE価の上昇など典型的な喘息症状の増悪が観察された。また、喘息モデルに供したWSX-1欠損マウスでは、喘息病態の形成に重要とされるTh2サイトカインの産生が顕著に亢進していた。以上の結果から、WSX-1は炎症性サイトカインの産生に対する抑制機能を有し、喘息症状を緩和する働きを担うことが明らかとなった。従って、WSX-1のリガンドであるIL-27が喘息治療に有効であることが期待され、リコンビナントIL-27発現系を構築すると共に、調製したタンパク質がWSX-1との相互作用を介して生理活性を発揮し得ることを確認した。アレルギー性疾患の治療におけるIL-27の投与効果についてマウスモデルを用いて検討しており、遅延型過敏反応に関してはIL-27が抑制的に働くことを明らかにした。また、アレルギー性鼻炎や皮膚炎などの気管支喘息以外のアレルギー性疾患についても現在解析を進めている。
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