BRAK/CXCL14は種間で極めてよく保存されたケモカインであり、発生や免疫系のホメオスターシスにおいて重要な役割を担っていることが推測されるが、その生理的役割は未だ報告がなく、また受容体も同定されていない。 保存された最初のシステイン残基よりN端側のペプチド配列はケモカインが受容体を介してシグナル伝達するために極めて重要な領域であることが知られているが、BRAK/CXCL14のN末端ペプチド領域は他の全てのケモカインと比較して非常に短い(2アミノ酸)ことが予測されていた。そこで、まずBRAK/CXCL14のシグナル配列の正確な切断位置を特定するためにBRAK/CXCL14のC末端に免疫グロブリンFc領域を融合させたキメラ分子(BRAK-Fc)を産生し、そのN末端配列をプロテインシーケンサーにより解析した。その結果、予測された切断位置でのシグナル配列の切断が確認され、BRAK/CXCL14は構造的に極めてユニークなケモカインであることが明らかとなった。 正確な分泌シグナルの切断位置が特定されたことで、現在このキメラ分子等を用いてBRAK/CXCL14標的細胞の探索を進めている。また並行してBRAK/CXCL14の生理的作用部位を同定する目的で、免疫系組織を含むマウスの各組織でのBRAK/CXCL14の発現をRT-PCRにより解析した。その結果、腸間膜リンパ節、パイエル板および骨髄での比較的高い発現が認められ、他の免疫系組織においても発現が認められた。現在、さらに免疫組織化学染色による詳細な発現細胞・作用部位の同定を進めている。 さらに、個体レベルにおけるBRAK/CXCL14の生理的機能を明らかにするためBRAK/CXCL14ノックアウト(EGFPノックイン)マウスの作製にも着手している。現在までにターゲティングベクターの構築、組換えES細胞の樹立までを完了した。
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