Fc受容体(FcR)は、免疫グロブリン(Ig)のFc領域と結合し、アレルギー、自己免疫、炎症など様々な免疫反応に関わる重要な因子である。新規のFcR同定の試みとして、Fca/μRとpIgRの間で相同性の高い免疫グロブリンドメインの配列をもとにしたデータベース検索により、これまでに細胞外にIgドメインを一つもつI型膜貫通タンパク質を見いだし、心臓・肝臓では末梢の毛細血管内皮細胞に限局して発現していることから、eIgR(endothelial Ig receptor)と命名した。その後、大阪大学のグループから報告されたHEV(high endothelial vennle)に特異的に発現する分子nepmucinと同一分子であることが判明した。HEVではリンパ細胞のローリングや浸潤に関与していることが示唆されたが、心臓などの毛細血管における機能は相変わらず不明のままである。eIgRと免疫グロブリンとの結合に関しては、HeLaなどの培養細胞を用いた実験系では結合が認められたものの、追認するような新たな結果は得られなかった。eIgRホモ欠損マウスは作製したものの、顕著な表現型の違いが見いだされなかった。本研究の進行中に、我々がeIgR(nepmucin)と呼んでいた分子がCD300 antigen like family member G(CD300lg)として公に命名されたため、論文化に際してはCD300lgとして公表するに至った。
|