入院診療の包括払い制度(DPC)の導入や国立大学の法人化における運営費交付金の定率削減といった、病院運営環境の厳しさの中で、放射線撮影部門でもさらなる効率的かつ経済的な運用が求められる中、フィルムレス化による使用フィルム材料のみならず、フィルム保管にかかわる人員削減などの付随効果もみられ、一定の経済効果が確認された.使用するフィルム材料については、入札を行っていても公定価格とほぼ同価での購入を余儀なくされており、診療報酬請求上フィルム袋や自動現像機のメンテナンス費用は撮影料に含まれると解釈され、フィルム出力を行わないフィルムレス運用が、フィルム袋や自動現像機のメンテナンス費用負担の面でも経済的に優位であることが示された.これは当院と同様の環境と思われる公的度合いのより高い病院については、経済面ではフィルムレス運用を推進する大きな一要素であろう. また診療面でのフィルムレス運用の貢献としては、いわゆる即時性や同時利用可能性、再加工利用可能性などがあげられるが、当院における撮影後フィルム出力依頼数の大きな減少によっても実際の医療現場に根付いていることが確認された。またいわゆるカンファレンスの場でもPCから直接プロジェクター出力できる利便性が、教育・研修病院としての機能向上に寄与していることが確認された. 一方で電子化システムによるリスクという点では、既存の診療オーダーリングシステム同様、コンピュータ処理システムとしての運用リスクを抱えている.当院での運用を踏まえると、運用にかかる初期投資を含むコストは削減コストによって十分回収できているが、これは一定額の初期投資というものが大規模特定機能病院という財政面の大きさにより負担軽減されている可能性が示唆された.換言すると中小規模病院へのフィルムレス・PACS化については初期投資額の低減というハードルの存在が示されたことになる.
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