平成18年度は、NHO宮崎東病院神経難病病棟の協力のもと、具体的なフォーマット検討とパイロットスタディを行い(倫理審査は宮崎東病院倫理委員会にて認可済)、東病院内に常設型倫理コンサルテーションルームを平成17年5月より開設し、病院スタッフに気軽に足を運んでもらうために「カフェ・スタイル」とし、【かふぇ☆りんり】と名付けた。基本的に毎週、水曜又は木曜の18時から20時30分まで、報告者が「臨床倫理コーディネーター(倫理コンサルタント)」として常駐し、主に神経難病病棟スタッフからの倫理相談を受け付けながら、「私の希望書」運用症例についても検討を行った。2005年5月から2006年12月までの利用状況については、以下の通りであった。(1)延べ利用者数177名、(2)利用者内訳(延べ人数)〔医師21名、看護師104名、MSW7名、児童指導員18名、その他27名〕。また、「倫理問題協議会」においても、「私の希望書」運用症例についても検討を重ねる中、判断能力のある14名のALS患者(平均年齢65.2歳±10.0歳)のうち、12名の患者に対し「私の希望書」を提示したところ、2名は記入を希望せず、4名は記入するかしないかの意思表示が最後まで不明なままとなり、6名の患者が記入を希望した。その中で実際に記入があったのは4名であり、2名は結局、記入には至らなかった。医療スタッフへの倫理的支援体制、いわゆる「倫理コンサルテーション」のシステム構築を伴った組織的対応がとられることなく、もし「書類のみ」としての事前指示書運用がなされるなら、それは医療現場に混乱をもたらすだけでなく、「文書だけ」を独り歩きさせてしまい、最も大切な患者自身を置き去りにしてしまうことになるだろう。以上のことから、いわゆる「事前指示書」を臨床現場にて運用するにあたっては、決して「書類」を独り歩きさせないよう、医療者がチームでアプローチし、患者・家族の揺れ動く心理に寄り添える「体制づくり」を進めること、その際には医療者を支援する「倫理コンサルテーション・システム」の構築が不可欠であることを強調しておきたい。
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