研究の目的 研究代表者が単離したOATP-Rは腎尿細管上皮細胞の血管側に発現する有機アニオントランスポーターであり、腎臓での薬剤や腎不全物質の排泄を担う分子である。本研究では、OATP-RノックアウトマウスをCre ricombinnaseを用いたconditional gene targetingで作製し、機能喪失モデルでOATP-Rの生体内機能の解析を行い、さらに腎不全モデル、薬剤性腎障害モデルをノックアウトマウスで作製し、その病態における変化を検討することを目的とする。 ノックアウトコンストラクトの作製 マウスOATP-Rはマウスの第一染色体上に13個のexonが約50kbに渡って分布している。この第4番目のexon(以下Ex4)をノックアウトするためのGene Targeting vectorの作製を行った。Gene Targeting vectorの構造はEx4を挟み、その5'側のintronにloxP配列を、3'側のintronにES細胞への導入時のpositive selectionのためのneomycin耐性遺伝子の両端にloxP配列を配置してある、loxP-neo-loxPカセットを挿入し、Cre recombinaseによるEx4のdeletionを行うようにし、また相同組換えのために5'側に約8.8kbのlong arm、3'側に1.2kbのshort armとなるマウスOatp-Rのgenomic DNAを配置する設計とした。 実際にノックアウトマウスを作製する系統である、129SVJ mice strainのgenomic libraryをEx4を含むDNAプローブを用いた方法でスクリーニングしEx4の5'側、3'側とも約10kbを含むgenomic DNAのクローンを単離し、さらに適切な制限酵素で切り出した断片をpBluescript-SK(+) plasmidへサブクローングした。loxP配列の挿入上問題となる、intron上のcis elementを避けるため、同部位のintornの塩基配列をsequenceで確認の上(NIH等のマウスゲノムDNAのデータベースにあるC57BL/6 strainと比較すると、129SVJ strainではintron部分の塩基配列はsequenceを行った約3000bpの部位のみでも全体の1.4%程で塩基の置換や欠失等の相違があった)、loxP配列挿入部位を決定した。 現存Gene Targeting vectorが完成し、今後ES細胞への導入とノックアウトマウス系統の樹立の段階へと研究を進めていく予定である。
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