研究概要 |
カルバペネム系薬は,緑膿菌感染症に対して選択される抗菌薬のなかでも切り札的な位置づけにあるため,カルバペネム系薬耐性緑膿菌による感染症は抗菌薬療法に難渋し致命的になることも少なくない。さらに,カルバペネム系薬耐性緑膿菌は,病院感染症の主要な原因菌としてもしばしば問題になる。本研究は,カルバペネム系薬耐性に関連する外膜タンパク質(OprD)の産生量の変化を迅速に検出する検査診断法の構築を目的に実施している。 平成17年度は,これまでに浜松医科大学医学部附属病院で分離された緑膿菌11株と標準菌株PAO-1を用いて,カルバペネム系薬を含む抗菌薬感受性試験,外膜タンパク質の解析,OprDをコードする遺伝子領域の塩基配列の決定を行った。抗菌薬感受性試験から,6株の臨床分離株がカルバペネム系薬に耐性であった(イミペネムに≧16μg/mL)。つぎに,外膜タンパク質を抽出してSDS-PAGEにより解析を行ったところ,カルバペネム系薬に耐性を示した6株はOprDに相当すると考えられる46kDaのタンパク質の産生が低下していることが示された。さらに,OprDをコードする遺伝子領域の塩基配列を決定した結果,カルバペネム系薬に耐性を示した6株とPAO-1との比較ではヌクレオチドレベルで65.6〜99.8%のホモロジー,カルバペネム系薬に感受性を示した5株とPAO-1との比較では95.9%のホモロジーであった。このことから,カルバペネム系薬に耐性を示す臨床分離株において,OprDをコードする遺伝子領域は多様性に富むことが明らかになった。 現在,抗OprD抗体および抗OprM抗体(コントロール)を作成するために合成ペプチドを作成し,家兎に免疫を行っている。また,OprD産生の変化をより迅速に検出するための方法を構築するために,外膜タンパク質抽出法の迅速化もあわせて検討している。
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