平成17年度は、スライドガラスのcoating法と、組織切片の処理法の検討を行った。濃度勾配スポットと組織化学染色を行う組織切片が一枚のスライドガラス上に設置できるスライドガラスのcoating法を検討した。合成核酸のアミノ基と化学結合するタイプのDNAマイクロアレイ用コーティングを施したスライドガラス上に、パラフィン切片、及び凍結切片が良好に貼布できること、さらに組織用にシランを重ねてcoatingできることが明らかになった。この標本を用いて、ヘマトキシリン・エオジン染色等の通常染色、特異抗体を用いた免疫組織化学染色、DigoxigeninラベルのcRNAプローブを用いたinsituハイブリダイゼーションが可能なことが確認された。本成果は、本研究課題の技術改良の根本となる重要な発見である。 さらに、組織中のRNAを完全分解できるRNaseの処理条件を検討した。ラット精巣を材料に、rRNAのプローブを用いて検討した。RNase Aの濃度条件を0.05、0.1、0.2、0.5、1.0mg/mlに振って組織切片を37度60分間処理したところ、0.2mg/mlでは、わずかにspermatogoniaで染色性が残った。しかし、0.5mg/mlで処理すると、完全に組織切片中のRNAを分解することができた。合成オリゴヌクレオチドのスポットに、組織切片を重ねて貼り付けるには、切片中の対応するmRNAを完全に分解しておく必要がある。本研究成果により、スポットした標的分子に、組織切片を重ねて貼り付けることによって、あたかも組織中の標的分子のような状態に修飾できる。本技術の実用化に大きく貢献できる成果である。 以上の成果を踏まえ、次年度は、実際にp53を標的分子に選択し、オリゴヌクレオチドの濃度勾配スポット部を有したスライドガラスを作成する。さらにこのスライドガラス上に組織切片を貼り付け、同一標本としてハイブリダイゼーションし、蛍光強度の定量化を行う予定である。
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