平成18年度は、昨年度に引き続き、組織中のRNAを完全に分解できるRNase処理の条件を検討した。ラット精巣切片だけでなく、肝臓、小脳についても0〜500μg/mlに希釈したRNase Aを用いて37℃で60分間処理を行った後、rRNAに対するin situ hybridization(ISH)を行った。肝臓では、低濃度のRNase(1.0μg/ml)処理でrRNAのシグナルが一様に消失した。一方、小脳ではプルキンエ細胞のシグナルが、高濃度のRNase(500μg/ml)で処理をしても完全には消失しなかった。この結果は、精巣切片にRNase処理を行った際、精祖細胞でシグナルが完全に消失しなかったことと同様の結果となった。本研究結果より、スポットした標的分子に組織切片を重ねて貼り付ける際には、肝臓のように低濃度で一様にRNaseが作用する組織を選択することが必要であることが明らかとなった。 さらに、pBluescriptにp53 cDNAを組換え、full length、及び市販の抗体(DO-7、ICA.9)と同領域を認識するヒトp53 mRNAに特異的な4種類のcRNAプローブを作成した。SW620細胞、及びヒト大腸癌組織切片に対してISHを行い、p53 mRNAの発現の差異を検討中である。 また、既知の濃度(0〜5.0μg/ml)のp53 sense RNAを含有したアガロースブロックを作成し、これについてISHを行い、アガロース基質中のRNA濃度の違いによるp53 mRNAシグナル強度の差異についても検討中である。本技術が確立すれば、既知の濃度のRNAを含有するアガロース切片と組織切片を同一スライドガラス上でISHを行うことにより、目的のmRNA濃度を定量化できると考えられ、技術の実用化に大きく貢献できる。 以上の成果を踏まえ、次年度はさらにmRNAの定量化に向け、オリゴヌクレオチドの濃度勾配スポット部を有したスライドガラスを用いた方法と、既知の濃度のRNAを含有したアガロースブロックを用いた方法の双方について比較検討を行う予定である。
|