平成19年度は、昨年度に引き続き、4種のp53mRNAに特異的なcRNAプローブを用いて、ヒト大腸癌細胞・SW620細胞、及びヒト大腸癌組織切片に対してin situ hybridization(ISH)を行い、p53 mRNAの発現量の差を比較検討した。これについては今後も、よりhybridizationの特異性が高く、切片中のp53 mRNAの含有量の差を、発色基質の濃淡の差として、明瞭に染め分けることができるプローブを選別するために、研究を継続する。 また、既知濃度(0〜5.0μg/ml)のsenseRNAを含有したアガロースブロックのISHについても検討した。アガロースのみを基質としてRNAを含有させたブロックのパラフィン切片では、前処理、染色といった操作中に簡単に剥離してしまった。そこで基質中にセルロースを加えると、ISHの操作中に切片が剥がれることなく発色まで操作を行うことができることが判明した。このセルロース加アガロースブロック用いれば、どのようなmRNAでも定量化を行うことが可能となり、本技術の実用化に向けての大きな貢献となった。 さらに、SW620細胞とHela細胞を用いて、リアルタイムRT-PCR法、及び比色法を原理とした市販のmRNA定量キットを用いて、p53mRNAの定量化を行った。この2つの方法によるp53mRNA定量の結果には、相関関係が認められた。この結果は、切片上の定量化のデータの検証を行う上で必要不可欠なデータであり、今後、さらにp53mRNAの発現量に差があるとされる複数のヒト大腸癌由来細胞株を用いても検討を重ねる予定である。また、悪性腫瘍に関係があると考えられている他の分子(VEGF、CEA等)についても検討していきたい。 また、昨年度まで行ってきたラット精巣、肝臓、小脳のパラフィン組織切片を用いた、組織中のRNAを完全に分解できるRNase処理条件の検討については、本技術の基礎となるものであり、現在、欧文論文を準備中である。
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