本研究では、survivinやlivinなどの抗アポトーシス分子に対する自己抗体の血清濃度を測定し、その病態生理学的意義について解析を行っている。本年度は、(1)まず、survivinおよびlivinのリコンビナント融合蛋白(Hisx6-T7-myc-survivin、Hisx6-T7-livin)を固相化抗原としてELISA系を確立した。すなわち、希釈血清と室温で1時間反応後、結合したペルオキシダーゼ標識抗ヒトIgG抗体をOPDで発色させた。(2)次に、健常者血清の平均濃度+2SDをカットオフ値として、各種癌患者における抗survivn抗体の陽性率を調べた。その結果、食道癌、胃癌や大腸癌などの消化器癌で30から40%、乳癌で20%、肺癌では60%の症例が陽性であった。また、抗livin抗体についても同様に陽性率を検討したどころ、消化器癌で50-70%、乳癌で30%、肺癌では50%であった。(3)両抗体とも、臨床病期の進行に伴い発現量が多くなる傾向がみられた。 (4)抗survivn抗体と抗livin抗体との間には有意な相関関係はみられず、互いに独立したパラメータと考えられた。(5)そこで、両抗体の組み合わせアッセイを行ったところ、乳癌で50%、肺癌で70%まで陽性率が上昇した。現在までの検討で、survivinやlivinに対する自己抗体の陽性率が、これまで報告がみられる抗p53抗体のそれ(約10-30%)に比べ、高いことが明らかになった。
|