前年度の研究において肺癌培養細胞A549の細胞溶解液を用いた1次元分画(液相等電点電気泳動あるいは逆相クロマトグラフィーによる分画)と患者血清との反応においてコントロールと比較して有意に強い反応を示す分画が見いだされた。しかし分画数が少ないため、一つの分画に膨大な種類の蛋白質が含まれており、最終的な同定が極めて困難であることから、本年度は2次元分画を行い、患者血清との反応性を検討した。 2次元分画として前述の液相等電点電気泳動による1次元分画(20分画)を用いて、これをさらに逆相クロマトグラフィーによりさらに80分画に分離してフラクションを回収し、凍結乾燥処理を行ってmobile phaseを除去後、適当なbufferにて溶解させた。これを抗原液として蛋白濃度を調整後、マイクロプレートに固相化し、その後患者血清と反応させ、ELISAにて検出を行った。 患者群とコントロール群で統計検討を行うと、患者群で有意に高い反応を示す分画が確認され、また有意に低い反応性を示す分画も確認され、何らかの意味のある所見とも考えられた。陽性分画には特異的抗原が存在すると考えられたが、残念ながら最終的なprotein IDを得るまでには至らなかった。
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