脂肪細胞における上皮増殖因子(EGF)ファミリーの機能を明らかにするために、培養細胞を用いて解析を行った。 1.EGFファミリー受容体ErbBの発現の解析 マウス白色脂肪細胞株HW細胞および褐色脂肪細胞株HB2細胞を用いて、脂肪前駆細胞から成熟脂肪細胞への分化過程におけるErbBファミリーの発現をWestern blotting法にて経時的に解析した。 ErbB1(EGF receptor)はHW細胞、HB2細胞とも分化による発現量の変化はみられなかった。また、ErbB2は両脂肪前駆細胞においては発現が認められたが、分化とともに発現量が減少した。 2.EGFファミリー刺激時の脂肪細胞の反応の解析 EGFファミリーのEGF、betacellulinおよびHB-EGFをHW・HB2細胞に添加するとErbB1のリン酸化が認められ、脂肪細胞の増殖促進がみられた。 経口糖尿病薬・グリクラジドは多機能性をもつことが知られている。グリクラジドをHW・HB2細胞に添加すると、ErbB1のリン酸化を抑制し、両脂肪細胞の増殖抑制と分化誘導がみられた。一方、茶カテキンであるエピガロカテキンガレート(EGCG)は、EGFによるErbBのリン酸化を抑制することが報告されている。EGCG添加したHW・HB2細胞においてもEGFによるErbB1のリン酸化が抑制され、両脂肪細胞で増殖と分化の抑制が認められた。これらのことにより、HW・HB2細胞の増殖・分化にはEGF-ErbB系シグナルが関与しており、この経路を介して脂肪細胞の機能を制御していることが示唆された。
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