研究概要 |
平成17年度は,A)大規模サーベイランスデータを用いた針刺し切創リスク分析,B)手術室と新人看護師の針刺し切創リスク分析およびC)介入対象病院におけるベースライン調査と原因鋭利器材制御による職業感染予防の具体的介入策が整理された.具体的には,A)では「採血時」の受傷リスクとその予防策の整理を試みた(学術誌「臨床検査」等に発表).B)では手術に特有の針刺し切創リスクが明らかとなり,作業手順の見直し(ニュートラルゾーンの設置等),安全器材(鈍縫合針,安全カバー付メス等)の利用促進など複合対策がその予防に重要と推測された(国際学会で発表).新人看護師では血液非付着の鋭利器材による皮膚損傷を高率に発生し(針刺し経験は65%(n=37/60),延べ56件発生(140件/新人看護師100人/年)早期の針刺し切創予防教育の重要性が指摘された(国内学会で発表).C)では,針刺し切創の公災・労災請求書の記載事項をエピネット日本版(Epysis109)で分析し,対象8病院(総病床数5,826床)では12ヶ月間に200件(3.4件/100床)の針刺し切創の公災・労災申請があり,感染管理室等の針刺し切創院内記録から申請率は82%(200/243件)とわかった.分析の結果,1)針刺し切創発生率は看護師・常勤医師・検査技師に比べ研修医は約3倍(9.2件/100人/年)の発生,2)医師と看護師では受傷原因器材が異なる,3)受傷パターンは器材の種類とその使用特性(医療行為)と関連,特に静脈留置針は使用後の片付け時,縫合針は使用中,翼状針は使用中と片付け時に針刺し切創が発生する傾向などが確認され,対策提案に結びつく効率的な針刺し切創疫学調査の構築とその活用は針刺し切創防止戦略立案に有効と考えられた(国内学会で発表).その他,本調査を通じて1対象病院における骨髄穿刺時の医療事故リスクの分析などが検討された.
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