平成17年度は、検疫所が分析対象としている農薬を中心に、GC/MSで測定可能なものから約270種類を選んで検討を進めた。抽出には50mL容量のプラスチック製遠心管を用いて、あらかじめ均一化した試料10gにアセトニトリル20mlを加え、ホモジナイザーで撹拌抽出を行った。その後無水硫酸マグネシウムと塩化ナトリウムを加え、フタをして手で激しく振盪して塩析脱水を行い、遠心分離を行って粗抽出液を得た。この粗抽出液をグラファイトカーボン(GCB)と一級二級アミン(PSA)を積層したカラムに負荷し、精製を行った。GCBで色素を、PSAで脂質を除去できたが、PSAで一部の農薬が吸着される為、溶出溶媒に酢酸を加えて回収率の向上を行った。酢酸を加えることによりPSAの能力が低下し、精製効率は低下するデメリットも発生した。分析法を小スケールで単純化した為、数検体であれば農産物の均一化から測定可能となるまでの時間を3時間以内とすることができた。150種類以上の分析対象物の解析を1台の分析機械で行うのは簡易でないので、有機リン系農薬の測定にはFPDを用い、ピレスロイド系農薬や有機塩素系農薬の測定には負化学イオン化法(NCI)GC/MSを用いた。それ以外の農薬はGC/MSのスキャンモードを用い、定性、定量を行った。10種類程度の代表的農産物を対象に添加回収試験を行った結果、約240種類の農薬で70〜120%の回収率が得られ、相対標準偏差も多くの農薬で20%以下であった。各農薬の検出下限値は0.01〜0.05ppmの範囲内であった。
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