平成17年度は以下の点を明らかにした。 1.自由行動下血圧(ABP)による血圧短期変動および心拍短期変動の脳卒中予後予測能 ABPのデータを有する脳卒中の既往のない35才以上の一般住民1902人の死亡転出状況を平均9年追跡した。血圧および心拍短期変動性の指標として、30分毎の血圧および脈拍の標準偏差を採用し予後との関連を血圧レベルおよび各種危険因子(年齢、性別、降圧療法、喫煙状況、高脂血症、糖尿病、肥満、脳心血管病既往)を補正したCox比例ハザードモデルで検討した。 昼間血圧短期変動の増大は脳卒中発症と関連し、昼間収縮期血圧短期変動の最も大きいQuintile(14.2mmHg以上)においてリスクの有意な上昇が観察された(RH2.85、95%CI 1.17-6.98、p=0.02)。一方、昼間心拍短期変動では変動の減少が脳卒中と関連し、昼間心拍短期変動の最も小さいQuintile(7.7bpm未満)においてリスクの有意な上昇が観察された(RH1.86、95%CI 1.03-3.35、p=0.039)。以上よりABPMによる30分毎の昼間血圧変動の増大および昼間心拍変動の減少が脳卒中発症リスクと関連することを明らかにした。(第28回日本高血圧学会総会にて発表) 2.家庭血圧による血圧日間変動の脳卒中予測能 家庭血圧測定回数を3回以上測定した脳卒中の既往のない35歳以上の一般地域住民2578人を平均10年追跡した。血圧日間変動の指標として、個人内の家庭血圧の標準偏差を利用した。 脳卒中発症と血圧日間変動との関連を家庭血圧レベルおよび他の危険因子(性、年齢、喫煙状況、肥満、降圧療法、高脂血症、糖尿病、脳心血管病の既往)で補正したCox比例ハザードモデルで検討したところ、収縮期血圧日間変動の5mmHg上昇は脳梗塞の相対危険度1.39倍(95%CI 1.09-1.76)、同様に拡張期血圧日間変動の5mmHg上昇が相対危険度1.31倍(95%CI 0.98-1.77)に相当した。以上から、一般住民において、家庭血圧による血圧日間変動の増大は虚血性脳卒中の独立した危険因子であることを明らかにした。(第30回米国高血圧学会にて口頭発表)
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