研究概要 |
わが国では伝統的に食塩摂取量が欧米諸国に比べ多く、食塩の過剰摂取に起因する高血圧の有病率が高いと考えられている。本研究では、地域住民を対象に食塩摂取状況のマーカーである24時間尿中Na排泄量の測定、食塩摂取状況の質問紙調査、さらに新しい食塩摂取バイオマーカーとして、血漿レニン活性、随時尿中Na濃度測定を行い、その有用性を検討するとともに、遺伝子多型の分析を行い、遺伝・環境要因が血圧値に及ぽす影響を検討した。対象は茨城県K町の基本健康診査の受診者で、遺伝子多型の分析に同意した2,823名である。食塩感受性高血圧の侯補遺伝子であるアンギオテンシノーゲン(AGT)T174M、αアデュシン(ADD1)G460W、アンギオテンシン変換酵素(ACE)I/D、G蛋白質β3サブユニット(GNB3)825T、アルドステロン合成酵素(CYP11B2)T344C遺伝子多型について分析した。いずれの多型も全体として血圧値との有意な関連は認められなかったが、食塩摂取量別に分析した場合、AGTのTM+MM群.(若年非過体重者)、ADD1のWW群(男性)、ACEのII群(男女とも)、CYP11B2のTT群(65歳以上男性)については高食塩摂取群において、GNB3遺伝子多型のTT群で低食塩摂取群において多型と血圧値との関連が認められた。また、スポット尿中Na濃度と24時間Na排泄量は男女とも良好な相関を示し、血漿レニン活性は、女性では低値が、男性では低値と高値のそれぞれが高食塩摂取と関連する可能性が示唆され、いずれも一般集団での食塩摂取状況の推定に有用であることが示された。さらに、上記の多型と低レニンもしくは正〜高レニン高血圧との関連を検討したところ、特に女性のAGT、男性のCYP11M2については低レニン高血圧と、女性のACEについては正〜高レニン高血圧と関連する可能性が示された。
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